- あらすじ
どれだけ絶望すれば、人は救われるのか?
「天動説」の大家・ピャスト伯から研究を託されたバデーニは、「地動説」証明へとさらに没頭する。一方、オクジーは一連の体験を物語として執筆し続けた。
それぞれが希望を胸に行動する中、圧倒的絶望が音も立てずに彼らの元へと忍び寄るーーー
眼を塞げ、耳を塞げ、凡庸であれ。それこそが知性に対抗する唯一の手段だ。
- おすすめポイント
・「チ」で「チ」を結ぶ物語。私達は本当に「知」っているのだろうか。正しいだとか間違いだとかはただの思い込みかもしれない。緊迫感のある映画を観たような気分で、ハラハラしながら読める4巻。
オクジーとバデーニが地動説を解き明かすまでのお話。
また、最後にオクジーが地動説を、地球にある感動を信仰し、地獄を選び行動するまでが描かれている。世の中を変えるのに必要なものは「知」だと明言するバデーニ。
一方で、世の中の秩序を守り、維持していくために必要なものは「血」だと明言するノヴァク。世界を変えるモノはいつも「知」を欲し、託し、託されて新たな文明を築く。
地球の理を追求する男、信仰に隠された真実を求める男、知識を発信する決意を持った男。真実を言葉にして女として発表したい彼女。異端審問官という存在。統治者達の振るう暴力。及ぼす恐怖。
地球が回っていようがいなくても、困るやつなんかいないのは、案外。今も昔も変わらないのかもしれないけれど。真実を追求する、理へ触れようとするのを。ひとがつくったものが、阻害する、殺す、世界を誑かすのは、如何なものか。
鳥の視点はないセカイ。しかし、触れた事実を。流れたチを。蔑ろには出来ないんだ。
- おすすめしたい他作品
・ヒストリエ
舞台は紀元前。奴隷の身分にありながら、豊かな教養と観察眼、判断力、そしてそれらを駆使して行動を起こす度胸を兼ね備えた、不思議な青年・エウメネスがいた。
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本作も人々の思想と魂に触れ、読むにつれて引き込まれていく作品。